「ローコード開発って今後も伸びるの?」「エンジニアの仕事はなくなるの?」こうした疑問を持つ方は少なくありません。結論から言えば、ローコード開発の将来性は非常に高く、市場規模は年平均20%以上の成長を続けています。
国内市場だけでも2023年度に812億円を超え、2028年度にはその1.8倍に拡大する見通しです。本記事では、市場データをもとにローコード開発の将来性を多角的に分析し、エンジニアのキャリアへの影響や生成AIとの関係まで掘り下げて解説します。
そもそもローコード開発とは?わかりやすく整理

ローコード開発とは、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を使い、ドラッグ&ドロップなどの視覚的な操作を中心にアプリケーションを構築する開発手法です。従来のシステム開発では、エンジニアがプログラミング言語を用いて一行一行コードを書く必要がありました。ローコード開発では、この作業の大部分をビジュアルな操作に置き換えられます。
ただし「コードをまったく書かない」わけではありません。ここがノーコード開発との違いです。ローコード開発では、標準機能では対応できない部分に限り、最小限のコードを記述して柔軟にカスタマイズできます。テンプレートだけで完結するノーコードと比べて拡張性が高く、業務システムや基幹システムの一部にも適用できるのがローコードの強みです。
ローコードとノーコードの違い
ローコードとノーコードは混同されがちですが、対象とするユーザー層や適用範囲が異なります。
| 項目 | ローコード開発 | ノーコード開発 |
|---|---|---|
| コーディング | 最小限のコード記述が可能 | コード記述なし |
| 対象ユーザー | エンジニア・IT担当者 | 非エンジニア・業務担当者 |
| カスタマイズ性 | 高い | テンプレート範囲内 |
| 適用範囲 | 業務システム〜基幹システム周辺 | 簡易ツール・社内アプリ |
| 拡張性 | API連携や外部サービス統合が可能 | 限定的 |
ノーコードは手軽さが魅力ですが、システムの規模が大きくなると対応しきれなくなるケースが出てきます。企業がDXを本格的に推進する場面では、ローコード開発が選ばれることが多いのはこのためです。
ローコード開発の将来性を裏付ける市場規模データ
ローコード開発の将来性は、各調査機関のデータが裏付けています。国内外の市場は一貫して拡大を続けており、鈍化の兆しは見えません。
世界市場の成長予測
出典:Fortune Business Insights「Low-Code Development Platform Market」
※Gartner、Research and Marketsの予測値を併記
Fortune Business Insightsのレポートによると、世界のローコード開発プラットフォーム市場は2025年に約374億ドル規模に達しました。2034年には3,769億ドルにまで拡大し、年平均成長率(CAGR)は29.1%と予測されています。
Gartnerは2027年に650億ドル、Research and Marketsは2030年に1,870億ドルという予測を出しており、調査機関によって数字の幅はあるものの、「大きく成長する」という方向性は共通しています。
国内市場の成長予測
出典:株式会社アイ・ティ・アール(ITR)「ITR Market View:ローコード/ノーコード開発市場2025」(2025年2月6日発表)
国内に目を向けると、ITRの調査では2023年度のローコード/ノーコード開発市場は売上金額812億円、前年度比14.5%増という結果でした。2028年度には2023年度の1.8倍に拡大すると予測されており、年平均成長率は12.3%です。
デロイト トーマツ ミック経済研究所のレポートでも、ローコードプラットフォーム単体で2024年度に3,178億円と、2桁成長が続いています。大企業を中心に導入が進み、今後は中堅・中小企業への浸透も加速する見込みです。
ローコード開発の将来性が高いと言える5つの理由
市場データだけでなく、ローコード開発の成長を後押しする構造的な要因がいくつもあります。
IT人材不足の深刻化
経済産業省の試算では、日本国内のIT人材は2030年に(高位シナリオで)約79万人不足すると見込まれています。人材が足りない以上、少ない人数で効率的に開発を進められるローコードの需要は高まる一方です。
従来型の開発のように大規模なエンジニアチームを組まなくても、少人数でシステム構築を進められるのは大きなメリットといえます。
「2025年の崖」とDX推進の波
経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」問題も追い風になっています。レガシーシステムを放置すれば年間12兆円の経済損失が生じるとされ、システム刷新を急ぐ企業が増えています。
外注よりも素早く、低コストでシステムを構築できるローコード開発は、DX推進の有力な手段として位置づけられています。
生成AIとの融合

生成AIの登場により、ローコード開発の可能性はさらに広がっています。自然言語で「こんなアプリがほしい」と指示するだけで、ドラフト版のアプリを自動生成してくれるツールが登場しはじめました。MicrosoftのCopilot for Power Appsはその代表例です。
コーディングアシスタントやテスト自動化など、開発ライフサイクル全体にわたってAIが機能を担い始めているのが現状です。
クラウドサービスの普及
ローコード開発のクラウドサービスは、バリエーションが非常に豊富です。Excel代替のシンプルなツールから、モバイルアプリ開発に特化したもの、コーディングも可能な高度なプラットフォームまで、ニーズに応じて選択できます。
例えば、以下のように用途ごとに多様なクラウドサービスが登場しています。
- 業務アプリ開発:kintone、Microsoft Power Apps
- Webアプリ・データベース系:Airtable、Notion
- モバイルアプリ開発:Glide、Adalo
- 高度開発・拡張可能:OutSystems、Mendix
このように、用途や開発レベルに応じてサービスを選択できる点が、クラウド型ローコード開発の普及を後押ししています。
ローコード開発の将来性に対する課題
もちろん、ローコード開発が万能というわけではありません。将来性を正しく判断するには、課題やデメリットも理解しておく必要があります。
複雑なシステムへの対応限界
ローコード開発は、定型的な業務アプリや中規模のシステムには向いていますが、高度なアルゴリズムや大規模な基幹システムの構築には向かないケースがあります。
複雑な処理が必要な場面では、従来型のプロコード開発に切り替えざるを得ません。
ベンダーロックインのリスク
ローコードプラットフォームで構築したシステムは、そのプラットフォームに依存する構造になりやすい点も懸念されています。将来的に別のプラットフォームへ移行したくなった場合、データや設計情報の移植が困難になる可能性があります。
導入前に、データのエクスポート機能やAPI連携の可否を確認しておくことが重要です。
セキュリティとガバナンスの課題
市民開発者が増えると、IT部門の管理が行き届かないアプリが乱立する「シャドーIT」のリスクが高まります。開発の門戸を広げた分、セキュリティポリシーの策定やアクセス権限の管理がこれまで以上に求められます。
「ローコードで何でも解決できる」と過度に期待するのは禁物です。適用範囲を見極め、従来型の開発と使い分ける視点が不可欠です。
ローコード開発の将来性とエンジニアのキャリアへの影響
「ローコード開発が普及したらエンジニアの仕事はなくなるのでは?」という不安の声は根強くあります。この点について、現状と今後の見通しを整理します。
エンジニアが不要になることはない

結論から言えば、ローコード開発が普及してもエンジニアの仕事がなくなることは考えにくいです。ローコードで対応できるのは、あくまで定型的な処理やテンプレートで表現できる範囲の開発です。
大規模システムの設計、複雑なビジネスロジックの実装、セキュリティ設計、障害対応といった高度な業務は、引き続き専門スキルを持ったエンジニアが担うことになります。むしろ、ローコードで作られたシステムの保守・運用・改修にはコーディングスキルが不可欠で、ここに需要が生まれます。
エンジニアの役割は変化する

ただし、エンジニアに求められるスキルセットは確実に変わってきています。単純なコーディング作業がローコードやAIに置き換えられていく中で、今後エンジニアに求められるのは以下のような能力です。
- ビジネス要件を理解し、最適なソリューションを設計する力
- ローコードと従来型開発を使い分ける判断力
- 生成AIを活用して開発効率を高めるスキル
- セキュリティやガバナンスに関する専門知識
- 市民開発者をサポートし、品質を管理するマネジメント能力
「コードを書くだけのエンジニア」から「ビジネス課題を解決するエンジニア」へ。この変化に適応できるかどうかが、ローコード時代のキャリアを左右するポイントになります。
「ローコード開発はつまらない」と感じる人へ
「ローコード開発はつまらない」という声も散見されます。コードをゴリゴリ書くことに楽しさを見出していたエンジニアにとって、ドラッグ&ドロップ中心の開発は物足りなく感じるかもしれません。
しかし、ローコード開発の現場で求められるのは「組み立て作業」だけではありません。要件定義の精度を上げること、最適なアーキテクチャを選ぶこと、パフォーマンスチューニングを行うことなど、上流工程やコンサルティング寄りのスキルが問われる場面は多いです。むしろ、ローコードとプロコードの両方を使いこなせるエンジニアは市場で重宝されます。
ローコード開発の将来性を左右する主要な開発ツール
ローコード開発の将来性を実感するには、実際にどんなツールが使われているかを知っておくことも大切です。国内外で広く導入されている主要ツールを紹介します。
エンタープライズ向けの主要ツール
| ツール名 | 提供元 | 特徴 |
|---|---|---|
| Microsoft Power Apps | Microsoft | Microsoft 365との連携に強み。Copilot(AI)機能を搭載 |
| OutSystems | OutSystems | 大規模アプリ開発に対応。AI Mentor Studioで品質管理 |
| Mendix | Siemens | 製造業に強い。コラボレーション機能が充実 |
| Salesforce Platform | Salesforce | CRM基盤上で業務アプリを構築 |
| kintone | サイボウズ | 国産ツール。業務アプリを非エンジニアでも構築可能 |
世界市場ではMicrosoft、Salesforce、OutSystemsがシェア上位を占めています。国内ではkintoneの認知度が高く、中小企業を中心に導入が広がっています。
ツール選びで迷ったら、まずは無料版やトライアルを試してみるのがおすすめです。実際の操作感を確かめてから本格導入を判断しましょう。
ローコード開発の将来性と生成AIの関係
「生成AIが進化すれば、ローコード開発そのものが不要になるのでは?」という議論もあります。この点について、最新の動向を踏まえて整理します。
生成AIはローコードの「敵」ではなく「味方」
Gartnerのアナリストは、「2023年下半期には生成AIはローコードの脅威と見なされていたが、現在は補完関係として捉えられている」と分析しています。生成AIがコードを自動生成できるようになったことで、多くのベンダーがローコード開発プラットフォームにAI機能を組み込むようになりました。
生成AIはローコード開発を置き換えるのではなく、その能力を飛躍的に高める存在として位置づけられています。AIが生成したアプリケーションを管理・統制するためにも、ローコードプラットフォームの役割は今後ますます重要になるでしょう。
具体的にどう変わるのか
生成AIがローコード開発にもたらす変化は、おもに3つの領域で進んでいます。
1つ目はアプリケーションの初期構築です。自然言語でやりたいことを指示するだけで、UIやデータベース、ワークフローのドラフトを自動生成できるようになっています。開発者はゼロから組み立てる必要がなくなり、ドラフトを修正・調整する作業に集中できます。
2つ目は品質管理の自動化です。AIがコードの品質をチェックし、技術的負債やセキュリティリスクを自動的に検出する機能が実装されはじめています。
3つ目はテスト工程の効率化です。テストケースの自動生成やバグの予測が可能になり、リリースまでのスピードがさらに短縮されます。
ローコード開発の将来性を活かすために押さえるべきポイント
ローコード開発の導入を検討している企業や、キャリアとして取り組もうとしているエンジニアに向けて、押さえておくべきポイントを整理します。
企業が押さえるべきこと
まず重要なのはスモールスタートです。最初から基幹システム全体をローコードで構築するのではなく、部門内の業務アプリなど小規模な案件から始めて、成功体験を積み上げていくアプローチが効果的です。
次に、ガバナンス体制の整備。市民開発者が増えるほど、セキュリティポリシーや開発ルールの整備が欠かせません。IT部門がガイドラインを策定し、品質管理の仕組みを用意しておく必要があります。
そして、ベンダーロックインへの対策。複数のプラットフォームを評価し、データの可搬性やAPI連携の充実度を比較検討したうえで選定しましょう。
エンジニアが押さえるべきこと
エンジニア個人としては、ローコード開発の知識を「武器の一つ」として身につけておくことが有効です。従来のプログラミングスキルとローコードの両方を扱えるエンジニアは、市場での希少価値が高まります。
加えて、生成AIツールの操作スキルも習得しておくと差がつきます。Gartnerの予測では、2028年までにソフトウェアエンジニアの75%がAIコーディングアシスタントを使用するようになるとされています。早い段階からAIを活用した開発フローに慣れておけば、今後のキャリアで有利に働くはずです。
ローコード開発の将来性に関するよくある質問
ローコード開発は今後なくなりませんか?
世界市場・国内市場ともに年平均20%前後の成長が続いており、少なくとも2030年代前半まで市場が縮小する見通しは出ていません。IT人材不足やDX推進の流れは今後も続くため、ローコード開発の需要は拡大していくと考えられます。
ローコード開発エンジニアの年収はどのくらいですか?
ローコード開発エンジニア専門の年収データは限定的ですが、一般的なWebエンジニアと同等〜やや高い水準で推移しています。特にOutSystemsやSalesforceなど、特定プラットフォームの認定資格を持つエンジニアは高単価の案件を獲得しやすい傾向にあります。経験やスキルの幅次第で500万〜800万円以上も十分に見込める領域です。
ローコード開発で大規模システムは作れますか?
定型的な業務アプリや中規模システムであれば十分対応可能です。ただし、複雑なビジネスロジックや高度なパフォーマンスが求められる大規模基幹システムには、従来型の開発と組み合わせるアプローチが現実的です。「すべてをローコードで」ではなく、適材適所で使い分ける視点が重要です。
生成AIが進化するとローコード開発は不要になりますか?
現時点では、生成AIはローコード開発の競合ではなく補完技術として位置づけられています。AIが生成したアプリの管理・統制にはプラットフォームが必要であり、むしろ生成AI×ローコードの組み合わせが主流になると見られています。ただし、技術の進化スピードは速いため、今後の動向には注視が必要です。
ローコード開発に資格は必要ですか?
必須ではありませんが、特定ツールのベンダー認定資格を取得すると転職やフリーランス案件で有利になります。Microsoft Power Platform、OutSystems、Salesforceなどは公式の認定プログラムを提供しています。
ローコード開発の将来性まとめ
ローコード開発は、IT人材不足やDX推進の流れを背景に、国内外で高い成長を続けている分野です。世界市場は年平均29%超の成長、国内市場も年平均12%超の成長が予測されており、今後も拡大基調は続くと見られています。
生成AIとの融合が進むことで、ローコード開発の適用範囲はさらに広がっていくでしょう。エンジニアにとっては、ローコードとプロコードの使い分け、AIを活用した開発スキルの習得が、今後のキャリアを大きく左右する要素になります。
一方で、複雑システムへの対応限界やベンダーロックイン、セキュリティの課題も存在します。過度な期待は禁物ですが、適材適所で活用すればローコード開発は強力な武器になるでしょう。

